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なすび(被ばく労働を考えるネットワーク)     
www.hibakurodo.net 電話:090-6477-9358(中村)
Eメール:info@hibakurodo.net           

1.「被ばく労働を考えるネットワーク」 の設立・始動

 原発というプラントが稼働するには、制御室にいる電力会社社員よりもはるかに多くの下請被曝労働者が必要であることを、本誌の読者であればご存じだろう。また、それらの被曝労働者は、何重もの下請構造の中で賃金をピンハネされた上、簡単に解雇され、何の保障もなく使い捨てられることも。原発労働者は、この国で最も過酷な搾取・使い捨てを受ける労働者と言ってもよい。
 東電福島第一原発の事故のあと、その収束作業・廃炉作業に世間の関心が集まる中で、杜撰な安全管理や被曝線量のごまかし、偽装請負や違法派遣が少なくないことなど、様々な問題が報道された。ヤクザが介在して困窮者が半ば強制的に働かされている事例も伝えられた。これらは、事故後の混乱の中で非常時だから起こった特殊事案だ、というわけではない。日本の商業原発が稼働し始めて50年、ずっと続いてきた「原発労働をめぐる闇」が、社会の注目や原子力業界の工作の後退の中で、隠蔽しきれずに垣間見えたのだ。
 一方、汚染が原発施設内にとどまらず東日本に広範囲に拡散する中で、清掃・下水処理、運送・輸送など、これまで被曝とは無関係だった多くの労働で放射性物質の影響を避けられなくなった。さらに、国が主導して除染作業が始まり、被曝労働を前提とした新たな産業分野が出現してきた。
 しかし、被曝労働問題は日本の反原発運動の中で必ずしも主要なテーマとなってこなかった。労働運動でも、下請被曝労働者を主体とする運動は1980年代の全日本運輸一般関西生コン支部原発分会(斉藤征二分会長)の闘いや、個別の労災認定裁判とその支援闘争を除けば、ほぼ皆無に近い。それは3.11原発事故後も同様で、上記のように被曝労働の実態がメディアを通して社会化されても、反原発運動や労働運動の中では必ずしも十分に取り扱われてはこなかった。官邸前や国会前の大衆行動で被曝労働問題が語られるのは、ごく稀だ。
 その中で被ばく労働を考えるネットワークは、原発労働者とりわけ被曝要員とされる下請労働者の安全・権利について問題意識を持つ個人が集まり、2011年10月に準備会として始まった。しかし上記のような背景から、被曝労働者の運動を展開するエキスパートがいるわけではなかった。長く原発労働者の支援をしてきた双葉地方原発反対同盟の石丸小四郎さんや、かつて労災認定裁判の運動を経験した全国安全センターの人たち、原子力資料情報室の渡辺美紀子さん、そのほか、このネットワークの結成を呼びかけ・参加したメンバーたちが、相互に情報を提供しあって学びつつ、内部学習会・討論会や福島現地の組合との共催イベントを約一年に渡って積み重ねた。そして、2012年半ばに除染事業での危険手当不払いの相談が寄せられたことをきっかけに、同年11月にネットワークを正式設立して本格的な労働相談・労働争議を開始した。



[1] 『原発事故と被曝労働』 (さんいちブックレット007) 、被ばく労働を考えるネットワーク編、三一書房
[2] 『除染労働』(さんいちブックレット009)、被ばく労働を考えるネットワーク編、三一書房
『原子力資料情報室通信』第478号(2014/4/1)より


⇓ 続きは下をクリック ⇓
2.除染労働者の争議

 ネットワークがまずはじめに取り組んだのは、楢葉町先行除染におけるA社争議だった。相談を持ち込んだ労働者は、ハローワークの求人で「日当10,000円、食費・滞在費は会社持ち」という条件で2012年7月から除染に入った。7月分給与の支払後に、国からの危険手当が支払われることを業者から告げられたが、同時に、雇用時に遡って労賃5,500円(ほぼ福島県の最低賃金)への減額と滞在費・食費等の天引きを通告された。その結果、労賃10,000円+危険手当10,000円=20,000円の賃金が支払われるべきところ、全て込みで1日の賃金を12,000円とされた。これは事実上の危険手当のピンハネであるし、一方的な条件変更や正式な労使協定によらない賃金控除などは労働基準法違反だ。また、一緒に働いていた同僚は、さらに違法派遣業者が介在していたために、手取りはもっと少なかった。4名の当該労働者は、私たちのネットワークと協力する全国一般いわき自由労組に加盟し、雇用業者のA社、その上位業者の一次下請I社、元請・清水建設を相手に争議を行った。その結果、1日20,000円の賃金と不払いだった割増賃金が支払われて解決した。その後さらに他の2人の同僚も、同様の不払い賃金を獲得した。
 この争議が起こるまで、ほとんどの除染労働者が国から危険手当が出ていることを知らなかった。そのため、この争議についての報道は除染作業員への危険手当の存在を広く社会化することになり、その後、除染労働者からネットワークへの相談が相次いだ。
 次に取り組んだ争議は、田村市本格除染におけるD社争議だった。これは、ネットワークが2012年11月下旬にいわきで行った労働・医療・生活相談会に、同社に雇用された当該労働者が相談に訪れて、取り組みが始まった。先述の争議同様に危険手当や割増賃金の不払い、健康診断費用の不払いなどの賃金問題がまずあったが、さらにこの案件では、現場での装備や宿舎・食事の劣悪さ、労災もみ消し、現場監督者の暴力行為など、労働者を人間とも思わぬ取り扱いに、当該労働者の怒りが激しかった。総勢25名の労働者が全国一般福島連帯ユニオンに加盟し、雇用業者D社、その上位の二次下請・O林業、一次下請・K興業、元請・鹿島建設を相手に争議を展開した。約半年かかった争議は、労働者が要求する労働債権とほぼ同額の「解決金」が支払われて集結した。労災も正規の手続きをさせた。しかし、その「解決金」は、業者が公式に危険手当の不払いを認めた「未払い危険手当」ではなかった。
 この他にもいくつかの案件に取り組み、今もいくつかが争議中である。詳細は末尾に記載した文献にまとめたので、ぜひご参照頂きたい。

3.収束・廃炉作業労働者の争議

 東電福島第一原発の収束・廃炉作業で働く労働者からも相談が寄せられている。基本的に重層下請構造の末端で偽装請負・違法派遣業者に送り込まれ、賃金不払いや劣悪な待遇、それに起因した解雇などのトラブルが多い。
 特にひどかった事例としては、インターネット上のサイトで求人を行っていた違法派遣業者・T建設(いわき市)の場合だ。サイトには「除染・がれき撤去、日当15,000円~30,000円、交通費支給、寮あり」と書かれていたにもかかわらず、業者に指示されるまま自家用車で鹿児島からいわきまで行ってみると、日当は12,000円でプレハブ倉庫の隅にマットレスを敷いて寝袋で寝かされた。その後、借り上げ一軒家の「寮」に移動し、福島第一原発内外の工事・がれき処理などに従事したが、稼働日は1日2,000円の寮費を取られ、通勤のガソリン代にも事欠き、前借りの借金が膨らんだ。食事は当初、米が渡されただけで自炊だったが、後に稼働日のみ晩に弁当が出るようになった。待遇の悪さと増え続ける借金を恐れた労働者は、寮から逃げ出して私たちネットワークに参加するいわき自由労組に相談し、いわき労基署に「賃金未払いに係る申告」を行った。このT建設はヤクザ企業で法人登記もないが、ネット上のサイトで「ブラックの方、訳ありの方が多数働いています」と記載し、堂々と求人を行っていた。また、労働者を生活保護の申請に行かせるなど、アングラ貧困ビジネスを手がけ、貧困者を食い物にする業者だった。T建設の社長は労働基準監督署の指導も無視し続けたが、結局未払い賃金は一つ上の四次下請業者が立て替え払いをした。
 このほかにもいくつかの労働相談から争議を行ったが、除染労働者に比べ、収束・廃炉作業の労働者の労働相談の件数ははるかに少ない。相談が寄せられても、争議を行うところまでふんぎりの付かないことが多い。事故収束・地域復興の思いや使命感で作業に入っている人がいることもあるのだろうが、それ以上に、原発労働では労働者に対する心身の支配が確立しているという印象がある。

4.福島現地での情宣活動

 私たちは、労働相談を待つのではなく積極的に問題を掘り起こしていくため、今年2月17日にはJヴィレッジや周辺のコンビニエンス・ストアなど、労働者の立ち寄る場所でビラ撒きなどの情宣を始めた。労働者の反応は良く、ほとんどの人がビラやメッセージ入りのポケット・ティッシュ、使い捨てカイロなどを受け取ってくれた。「へえ、こんな団体があるんだ」という声や、ビラに記載された労働条件や安全衛生の問題を読んで「うちの会社、全部当てはまるよ!」という反応もあった。Jヴィレッジで交通整理をしていた労働者の一人は「ここにいる人で、不満のない人なんかいないよ」と話してくれた。
 この情宣では、Jヴィレッジやコンビニでのビラ撒きのほか、楢葉町本格除染(元請は前田建設工業・鴻池組・大日本土木JV)の工事部事務所に行き、その周辺に林立する飯場を含めた調査を行った。また、ハローワーク平(たいら)の前でのビラ撒き、仮設住宅での戸別ビラ入れ、最後はいわき駅前での街頭ビラ撒き・情宣なども行った。
 この情宣の終了後、早速、収束作業2件、除染作業2件、計4件の労働相談が私たちに入った。そのうちの一つを紹介しよう。それは、溶接型タンクの製造を請け負っているある業者に雇用された労働者からだった。彼らは通常の8時間の勤務のほか、朝2時間と晩2時間の残業を雇用業者に要求され、多いときには1日約13時間勤務の日もあった。と

にかく製造を急がされ、週を追うごとにノルマが2倍、3倍と増えていった。仕事中はトイレ休憩も許されず、大小便はタイベックの中に垂れ流せと言われていた。このような過重労働が続きあまりに体がきつかったため、二人の労働者が「こんなじゃ続けられない」と出勤拒否などの態度を取ったところ、雇用業者の社長に即時解雇と宿舎からの即日退去を通告された。放射線業務は労働安全衛生法上の危険業務なので、1日2時間以上の時間外労働は違法である。また、解雇予告は少なくとも1ヶ月前にしなければ労基法第20条違反である。時間外労働の割増賃金も正当に計算されていなかった。しかし、彼らが一番怒っていたのは労働者を「虫のように、ゴミのように扱った」ということだった。この案件は、不払い労働債権の支払いを要求するとともに、違法行為を改め労働者への待遇を改善させるべく、取り組みが行われている。

5.日本で初めての「被曝労働者春闘」統一行動

 このような取り組みを重ねた上で、私たちは「被曝労働者春闘」と位置づけ、この2、3月の取り組みを行った。寄せられた労働相談や情報提供、争議内容などを集約し、収束・廃炉作業と除染作業のそれぞれについて、統一要求として練り上げた。
 3月14日午前にはその要求書を手に、収束作業の事業者である東京電力本店と、楢葉町本格除染の元請代表である前田建設工業本社に対する申し入れ行動を行った。この行動は、三単産(全港湾、全国一般全国協、全日建連帯)による「福島と連帯するキャラバン行動」と合流して行われた。当初は社前で要求書の受け取りを拒否していた両社だったが、争議当該労働者を含む約200人による抗議の声の中で、ようやく要求書を受け取った。
 同日午後には関係する経済産業省、厚生労働省、環境省に対して、同様の要求書への回答を求め、交渉を行った。
 夜には千駄ヶ谷区民会館で「被曝労働者春闘」統一行動の報告集会を行い、130人が参加した。集会冒頭、呼びかけ人の一人である写真家・樋口健二さんが、ネットワークの取り組みの意義と期待を語ってくれた。そして、争議を行った元・収束作業労働者、元・除染作業労働者、現地労組からの報告を受けるとともに、この「被曝労働者春闘」の取り組みと結果が報告された。また、ゲスト・スピーカーに迎えた井戸川克隆・前双葉町長からは、かつて自身が配管や建設で原発建設工事に関わったことや、町長時代に労働者の安全・待遇をめぐって東電とやりとりしたことなど、貴重な話を聞くことができた。原発労働者を持つ家族や地域が被曝労働での被害に口をつぐむのは、原発事故後の今も同じだとの話もあり、取り組みでは丁寧な対応が必要であることを痛感した。
 この「春闘」の取り組みは、実態としてはキャンペーン的な範囲にとどまり、まだまだ本当の春闘にはなっていない。それでも、「被曝労働者春闘」と位置づけられた取り組みが行われるのはおそらく日本で初めてのことであり、それ自体が大きな前進だ。
 今後、福島現地での取り組みを継続し、さらに相談から争議を経て具体的な問題解決を積み重ねることで、収束・廃炉作業の労働者や除染労働者との信頼を培っていきたい。そして同時に、反原発運動や労働運動、そして広く社会的に、被曝労働者の安全・待遇改善・権利擁護の意識を広めていく必要があるだろう。このような取り組みを進めるため、多くの皆さんのご支援と合流をお願いしたい。

[1] 『原発事故と被曝労働』 (さんいちブックレット007) 、被ばく労働を考えるネットワーク編、三一書房
[2] 『除染労働』(さんいちブックレット009)、被ばく労働を考えるネットワーク編、三一書房
『原子力資料情報室通信』第478号(2014/4/1)より
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